モバゲーでメンヘル自慢する馬鹿に素晴らしい企画を提案してみた

 以前書いたように、私はメンヘル自慢をする馬鹿を見るためにモバゲーをしている。性別問わず浅く仲良くなるのが唯一の特技だと自負しているジショウ中高生研究家の私は、モバゲー内に無数に溢れているリストカッター(「メンヘル自慢する馬鹿」は格好悪いのでこれで)とのお友達関係を築いて、たまに茶々入れたりフォローしたりしながらも生態観察を頑張っていたのだけど、昨日全てが破綻してしまった。


 彼女達(サンプル数30人)が書く日記のほとんどは、「病んでいる」「死にたい」「恋愛運がない」「椎名林檎の歌詞が心に沁みる」「また切っちゃった」「今日はトランキライザーを数錠服用」みたいな文章に、各個人サイトでお馴染みの虚ろな目をアップで撮った写真もしくは綺麗な無数のラインの写真が添えられているような酷い内容の物で、栗の花に精液入れられる事だけがリアルのお前らは黙ってろよ笑い。と毎回ながらに感じていた。実際にそれを言っても意味がない事は知っているので、三点リーダを嫌味なほどに多用して薄いリアルさを醸しながら「今度はもっと深くやってみ!」的な、コメントと言う名のエールを贈ったりしていたんだけど彼女達は実際に行為には至ることはないとはいえ、私のコメントに怒ることもなく普通に対応してくれるのでもうちょっと踏み込んでも大丈夫なのではないか、と思い足を入れてみたのだが、そうしたら完全に失敗してしまった。


 始まりは、参加者が全員リストカッターバトル・ロワイヤルってすごくおもしろそうだな、という妄想からだった。次第に妄想は膨らみ、あいつら死にたい死にたい言っているくせに誰よりも自殺を恐れて誰よりも殺しに勤しみそうだなープププーという最低の妄想から転じて、「『自殺したい』と日記で垂れ流しているリストカッターと、ロリコン死姦願望者の需要と供給って一致するじゃないか。その相手を相互に見つけられるサービスがあれば完璧だ!クズが減る!」という企画を考え付いた私は、この素晴らしい企画を彼女達に是非教えてあげよう!彼女達程度のモラル意識なら本当に作りだしそうだ!と思い立ち早速モバゲー内のリストカッターの友達全員(30人)の日記に企画の旨を伝えるコメントをしてみた。


 数十分掛け行動が終わり、「久々に良い仕事をした!宿題を夏休み初日に徹夜でやり切ったときより充実感がある!」とベッドに寝そべり携帯電話を眺め悦に入りながら目を閉じ、きっとみんな私の企画に唸るぞ!やったー。と妄想をしていたら、疲れからかいつの間にか眠りに落ちていた。


 次に起きたのは1時間後。短眠な私はいつも睡眠が浅いのだが、疲れから考えても普段よりも少しばかり早起きだった。それはおそらく、私のしたあのコメントに対するみんなの反応が楽しみであったからであろう。そんな自己分析をしながらベッドから起きる事もなく、早速携帯電話に手を伸ばしモバゲータウンにアクセスしてみた。しかし、私の目に映ってきたのは私の期待にかなり反していた物ばかりであった。


 「お前最低」「馬鹿にするのもいい加減にしろ」「無神経」「クズ」「通報した」「死ね」


 コメント欄に並ぶは並ぶ低俗な中傷の数々。日記を書いている本人だけではなく、そいつの取り巻きも駆けつけており、すっかりコメント欄が炎上とも言うべき状況になっていた。しかもその大量のコメントの中には一人も私の意見に賛同する者はおらず、全てが全て私に向けられた中傷でしかなかった。私が企画を書いて渡った全てのコメント欄を見ても、みんな反応は同じ。コメント欄だけではなく、果ては私の伝言板(個々のユーザーページに付けられたコメント欄。もしくはBBSのような物)までもが、もう原爆でも落とされたかのような悲惨な状態になっていた。オー、エムジー。何故、何故なんだ。私は素晴らしい企画をわざわざ無償で教えてあげたのに!ひどい、ひどすぎる!自己を全否定されてしまったかのような気分に陥った私は悲しくなり、全てのコメントを見るのも無駄と判断しモバゲーを閲覧するのをやめ携帯を手から離した。


 そうして数十分後、大量に受信しているメール(モバゲー内から送る事ができる「ミニメール」の受信を通知するメール)を目を通さずに削除していると、新しく来た一通のメールの送信者のアドレスに目が留まった。info……、モバゲーの運営からだ。運営会社がクズ企業として有名なモバゲーでも、さすがにこういった対応はちゃんとしてくれるのだな。そう思いながら、そのメールを開いてみた。

件名:【重要】強制退会について
本文:
こちらはモバゲータウンサポートです。お客様のご登録は[ルール&マナー][利用規約]に違反する行為が確認されましたため、退会とさせていただきました。今後当サイトをご利用いただくことができません。
違反理由:サイトの荒らし行為、当サイトが不適当と判断したもの


モバゲータウンサポート


 まず、メールを開いて件名を見た瞬間、顎が外れるとはこういったことだな、と即座に思ってしまったくらい驚いた。何だ、このそっけない文章のメールは。たったあれだけの行為と、この短い通知メールで強制退会処分とされてしまうのか。モバゲー運営の酷さについては前々からかなり聞いてはいたが、これほどのものとは思ってもいなかった。


 一度強制退会処分を受けたら最後。もう端末番号を変えない限り再入会は出来ない。私が時間をかけて作り上げた功績は一切捨て去られてしまう。そんなのあんまりだ。それに、モバゲーの、自傷中高生研究としての環境は他では味わえない程大変優れた空間であったのに。もう私は、「中高生研究家」と自称することすら出来なくなったような気がする。それまでモバゲーを知らなくても名乗っていたにも関わらず、なのにだ。それほどまでに、モバゲーとは偉大なる場所だった。


 もう私はこの事によりメインストリームから完全に除外されてしまった。自業自得。何故私はこの事態を予測できなかったのか。リストカッターがああいった馬鹿であることは分かっていたはずだ。原因は一つ、モバゲーユーザーよりも完全にモバゲーの運営を見くびっていた。あそこまでの稚拙運営ぶりと、ユーザーの反感などもろともしない切り捨て能力を持っているとは全く思っていなかった。


 私にまた仮想敵が出来た。モバゲータウン並びに運営元の株式会社ディー・エヌ・エー。私は負けない!必ずお前達をぶっ潰してやるからな!そう決心し、私はとりあえず兄の携帯電話を使い、モバゲーに再入会した。私はまだまだメインストリームに居たいんだ。今度はひっそりと頑張っていこう。自称中高生研究家から中高生研究家への道のりはまだまだ長い。そう、キモオタのくだらない自慢話のように……。(終)